3つ目の特徴はSNS的な側面を持つこと。口コミの投稿に対して「いいね!」したり、「行きたい!」と言ったり、具体的なコメントを投稿したりできる。「行きたい!」を押すと、自分がのちのち行きたい店がサービス内のアカウントに溜まっていく。行きたい店を共有するユーザー同士が誘い合わせて、その店に行くイベントを催すことも可能だ。「行きたい人がこの日時に8人集まったので、8人でイベントを企画しました」といった情報が、サービス内では頻繁に飛び交っている。

こうした仕組みは、過去のグルメサービスの分析の結果、構想された。インターネットの黎明期に最初に出てきたのが、住所や電話番号など店の客観的な情報を集約するグルメサイト。店はそのグルメサイトに掲載料を支払うことによって、インターネットで店を検索する利用客に向けて広告し、集客できる。次に、口コミによって、飲食店を評価するサービスが出てきた。口コミばかりではなく、☆の数などで、点数も付けて評価してもらうサービスとなった。この評価を集計して、地域や業態別の人気ランキングも作られ、公開されるようになった。この世代のサービスは、分かりやすく、人気も高いので、今も広く活用されている。ただし、口コミ情報は匿名性が高く、正確の担保は難しい。

こうした流れの中で、次世代のグルメサービスとして登場したのが〈Retty〉だった。個人の趣味嗜好が細分化した時代に、より付加価値の高い情報を提供する方法として、実名制を核にしたサービスを構想したのだ。ただ、サービス開始当初は我慢の時期が続いた。

奥田 当時は「Facebookは実名だから日本人には合わない。普及しない」とも言われていた。しかし私たちは、実名制はきっと定着すると見越して、〈Retty〉に実名で投稿してくれるユーザーを少しずつ増やしていった。最初の2年くらいは、我慢の時期だったが、月間の利用者数が100万を超えた13年頃から「実名投稿数の増加」→「オリジナルコンテンツの増加」→「閲覧ユーザー増加」→「実名投稿ユーザーの獲得」→「実名投稿数の増加」という好循環の成長エンジンが高速回転するようになり、急成長した。2017年5月には月間利用者数が3000万人を超え、次世代のグルメメディアとしては国内最大級の存在にまで成長している。

投稿件数の面から見ると、実名投稿件数が100万件を超えた頃から、実名投稿を元にまとめ記事を積極的に作成したため、オリジナルコンテンツが増えた。オリジナルコンテンツが増えると、「あそこに行けば情報が一杯ある」と評価され、閲覧数が加速度的に増えて、本格的な成長段階に入ったと考えられる。現在は、例えば「丸の内でランチ」といった検索をしてもらえると、多くの結果で〈Retty〉のまとめ記事が検索上位に表示される状態になっている。

特定のグルメ情報に詳しいユーザーを「Retty TOP USER」として認定し、その特定分野を好むユーザーにフォローを推奨する「TOP USER 制度」に力を入れているのも〈Retty〉の強みだ。「TOP USER」のかたがたは、ときには1晩で6~7軒もお店をはしごして口コミを書いたり、年間にラーメンを700杯も食べるなど、「この人のオススメなら間違いない」と判断できる特別な存在。こうした「TOP USER」が〈Retty〉の信頼性をさらに高めている。

実名制による信頼性が高い口コミ。ポジティブで定性的な(共感できる)お店への評価。SNS的なサービス内のネットワーク――。こうした3つの特徴を持つ〈Retty〉は、これまでのグルメサイトでは実現が難しかった性格の集客を可能にした。ある店が、〈Retty〉で紹介されれば、はっきりした個性があり、料理などの質が高いお店ほど、リピーター(常連客)になる確率が高い新規の利用客を獲得できる可能性が高まる。

奥田 例えば、東京・新宿の隠れ家的なレストランからは、「〈Retty〉を使うことで、新規顧客を獲得できている実感はあるが、強みである隠れ家的な雰囲気が壊れることはない」という声をいただいている。なぜこういう集客ができるかというと、〈Retty〉の場合、その店を実名で評価している人に属性が近かったり、好きな店の雰囲気が近いというタイプの人を新規顧客として集客できるからだ。そのため、隠れ家的な雰囲気のレストランには、そういう雰囲気を好む人が、新規顧客として来店する可能性が高い。また、その店を気に入った新規顧客が実名で〈Retty〉に投稿してくれれば、趣味嗜好の似た友人の間に、さらに情報が広がって、隠れ家的な雰囲気を好むコミュニティが拡大していく。こうして、何らかの特徴やこだわりのある飲食店ほど、集客基盤が安定し、強化できる。

従来、グルメサイトによる集客は、店がお金を出せば、その分だけ店の露出度が上がり、クーポンなどを目当てにした新規顧客が集まるという集客モデルだ(一次集客のみ)。クーポンなどで販促費をかければ、それだけ集客はできるが、クーポン目当ての新規顧客が店を気に入り、常連になってくれる可能性は高くない。いわば自転車操業的な集客が多かった。これに対して、〈Retty〉による集客は、常連が次の常連を連れてきてくれるといったタイプの集客モデルであり、いわゆる二次集客につながる可能性も高い集客モデルだ。

東京・麻布十番にあるラーメンBarは、約2年間で常連客を倍増させた。〈Retty〉を使い始めた当初は50人の実名投稿が集まり、50人につながる友人(店の新規顧客やその予備軍)は約1万人だった。2年後には実名投稿が100人になり、友人は約2万人になった。いまやラーメン店でありながら、お酒がよく売れて客単価の高い店となり、「オシャレな大人が集う遊び場」というブランディングも確立している。〈Retty〉を使った二次集客、つまりファン作りに成功している典型的な例だろう。

■個客をつかむ!次世代モバイルマーケティング戦略~〈GMOリピーター〉が目指すもの

2番目に登壇したGMOコマース取締役の北阪彰生氏は、モバイル広告、モバイル販促ツール作りを皮切りに、これまでのキャリアで一貫してモバイルマーケティングに取り組んできた。携帯電話の普及にともなって、モバイルマーケティングが1つの節目を迎えたのは2000年だという。この年、携帯電話の契約数が、固定電話の契約数を超えた。この当時、モバイルマーケティングの花形はメールマガジンだったが、iモードの契約者数が2000万を超えた頃から迷惑メールが急増し、2000年代前半に「メルマガ暗黒時代」がやってくる。

迷惑メールへの苦情が殺到したため、NTTドコモなどの通信キャリアはフィルタリング機能を相次いで開発し、提供するようになった。そのため、一人ひとりに、自由にメールを送ることが難しくなったのだ。メルマガという便利な手段で、顧客の情報を集めたいと思っても、「URL付きメール拒否機能」なども提供され、大きなハードルとなった。この苦境を救ったのがスマートフォンの登場だ。日本では、08年にiPhoneが、09年にアンドロイド端末が販売開始。すぐに爆発的に普及し、11年には携帯電話の1人1台時代が到来した。

GMOコマースの北阪彰生氏
GMOコマースの北阪彰生氏

北阪 スマートフォンのアプリが登場し、コミュニケーションのためのチャットアプリが、迷惑メールの環境を劇的に改善した。スマートフォンのおかげで、モバイルマーケティングは壁を乗り越えたと言える。ただ同時に、ユーザーによる情報の選別という課題が浮上した。スマートフォンはメディアへの接触チャネルとして加速度的に重要性を増しているが、情報があふれる中で、ユーザーは、この情報は要る、これは要らないという選別をどんどん進めている。これからのモバイル販促を考える場合、いかに的確に、ベストのタイミングで、ベストの対象に情報を届けられるかが成功への鍵を握ると思う。

一方、市場の変化も考慮すべきだと北阪氏は言う。少子化の影響もあって、外食産業の市場規模は最盛期(1995年頃)の30兆円から、25兆円程度にまで縮小している。中食、内食も強化される中で、外食の市場縮小の影響をどう補っていけばいいのか。

北阪 われわれが最大のポイントだと考えるのは、既存顧客の来店頻度を増やすことに加えて、既存顧客が連れてきてくれる新規顧客の獲得だ。そのために必要なのは既存顧客の属性を可視化すること。例えば、女子会特典のクーポンを男性ビジネスパーソンに送っても意味がない。かえって、価値の低い情報発信元だと解釈されて、メッセージの受信を拒否されたり、開封率が下がったりするケースも考えられる。そのため、既存顧客を可視化した上で、最適な人に、最適なタイミングで、最適な手段で、最適な内容のメッセージを送ることで、既存顧客の来店頻度を増やし、同時に既存顧客の知人の中から新規顧客を獲得する努力をすべきだ。週末近くに、電車で移動中の男性サラリーマンには金曜日限定のキャンペーンクーポンを送る。同僚とランチ中の女性ビジネスパーソンには、同じ店のディナー割引の情報を送る。ランチを楽しんだのと同じ店に、「ディナーで来てみようかな」と思ってもらうためだ。さらに、渋谷でデート中の若いカップルには、夕方からのハッピーアワーの情報を送るといったアプローチも有効だろう。

このように、顧客を可視化して「個客」にするために、GMOコマースが開発・提供しているのが〈GMOリピーター〉というツールだ。

北阪 マーケティングオートメーションを活用したシナリオ設定機能を使って、臨機応変に「個客」にアプローチできる。例えば、2週間に3回、来店してもらうことができれば、お店の記憶がその利用客にしっかり残り、常連客になってもらう可能性が高まるというデータがある。このデータを実現するために、「個客」に合わせて、2週間に3回来店してもらうためのシナリオを設定する。設定したシナリオを定期的に見直すことで、リピーターを増やすために最適の情報を、自動で発信できるようになる。AIを活用すれば、将来的に、より強力なモバイル販促を実施することも可能だ。米国のスターバックスの事例では、利用客が来店前に、あらかじめメニューを音声で注文できるAI搭載ツールを使って、店頭混雑による待ち時間を解消することによって、注文が4倍に増えた。AIがより賢くなると、こうした世界が実現していくと思う。

■売上UPの為の〈LINE@〉活用方法~親近感が利用客の“来店スイッチ”を押す

LINEの100%子会社であるLINE Business Partners(※注1)代表取締役社長の長福久弘氏は、講演の冒頭、LINEの上場後のコーポレートミッションとして「CLOSING THE DISTANCE(クロージング・ザ・ディスタンス)」をあげた。人とサービス、人とコンテンツの間の距離を縮めることによって利便性を、ひいては幸せを生みだそう、という考え方だ。〈LINE@〉というサービスも、この「CLOSING THE DISTANCE」の一環であり、〈LINE@〉という法人(店舗)向けツールは、店舗と利用客との距離を縮めて、幸せを生みだすためのマーケティングツールだと定義できる。
注1:2017年12月11日付けでLINE Business PartnersとLINE Payが合併。現在、長福氏はLINE Payの取締役COOを務める。