「生産性」向上の秘訣は「仕事の『仕組み化』」

「本当の『働き方改革』実現のための生産性向上セミナー」 2017年9月21日 15時~17時
<セミナー概要・講師等>
講師:庄司啓太郎氏/スタディスト取締役COO(最高執行責任者)

PCはもちろん、スマートフォンやタブレットだけでも簡単な手順で画像、動画付きの業務マニュアルや手順書を作成し、便利かつ有効に共有できるマニュアル作成・共有プラットフォーム〈Teachme Biz〉。幅広い業種の1800社(18年2月現在)もの企業が現場に導入し、成果をあげている。外食企業も〈Teachme Biz〉とはいたって相性が良く、キリンシティ、ジェイアール東日本フードビジネス、HUGEといった名だたる中堅~大手企業が早くから現場に導入。18年2月には、すかいらーくが「ガスト」を皮切りにグループの全ブランドの全店、約3000店舗に導入し、約10万人の従業員のトレーニング体制をつくるという計画を発表したばかりだ。 今回は、〈Teachme Biz〉を使ってマニュアルを作る前段として、現場の業務を「A感覚型」「B選択型」「C単純型」の3タイプに分類して「見える化」し、さらに「標準化」「マニュアル化」「ツール化」する「仕事の『仕組み化』」について、〈Teachme Biz〉を開発・提供するベンチャー企業、スタディスト(東京・神保町、鈴木悟史社長)の取締役COOである庄司啓太郎氏が実施したセミナーを抄録する。後半では、ジェイアール東日本フードビジネスの事例と、その導入効果も紹介された。

■理想の「半自動化」のために王道である4つの手順を踏む

スタディストの庄司啓太郎氏
庄司啓太郎氏

セミナーは、庄司啓太郎COOの問いかけ、質問に対して、セミナー参加者が手元のワークシートに考えを書き込むなどの作業をするワークショップ形式で進められた。この作業の前提として、庄司COOが最初に説明したのは、「仕事の『仕組み化』」についてだ。

庄司 私の考える理想の「仕組み化」された状態は「半自動化」だ。例えば駅の改札口、セルフ式ガソリンスタンドのように、人と機械による自動化がうまくミックスされた状態を作っていくのが「仕組み化」である。「仕組み化」のためには王道とも言える4つの手順を踏む必要がある。「見える化」→「標準化」→「マニュアル化」→「ツール化」というのが、その手順だ。「半自動化」による生産性向上がうまくいっている会社は、ほぼ例外なくこの通りの手順を踏んで「仕組み化」に取り組んでいるが、うまくいっていない会社は、どこかの手順を省略しているケースが多い。一番多い失敗例は、最後であるべき「ツール化」にいきなり取り組んだパターン。設計図もないのに、いきなり家を建てるようなものなので、まずうまくいかない。

庄司氏によれば、最初の手順となる「見える化」が一番くせ者で、注意深く実施すべき作業だ。「見える化」では、まず日常業務を細かく項目分けし、「A感覚型」「B選択型」「C単純型」の3分類に仕分けしていく。「A感覚型」は経験や知識による高度な判断が必要となる仕事で、「クリエイティブ」「付加価値業務」「不確実性が高い」という特徴がある。「B選択型」は一定のパターンから選択し、実行する仕事。「C単純型」は誰がやっても同じ結果が出る(出なくてはならない)仕事。「B選択型」「C単純型」は「オペレーショナル」「あたりまえ業務」「不確実性が低い」という特徴がある。実際に仕分けをしてみると、ABCの構成比はどんな業種の企業でもほぼ同じになるという。Aが10~20%、B+Cが80~90%の比率だ。この「B選択型」「C単純型」こそ、「仕組み化」がしやすく、効果が出やすい業務だと言える。また、「B選択型」「C単純型」の業務が価値が低いとは言えない。外食企業の場合は、看板メニューの調理が「B選択型」「C単純型」に当たる。どの店に行っても、同じ水準の看板メニューが出て来ないと外食企業の経営はうまくいかないはずだ。

2番目の「標準化」の段階では、B、Cに分類された業務一つひとつについて、インプット(材料)、プロセス(手順)、アウトプット(完成形)を書き出し、無駄がないかどうかの検討を加える。3番目の「マニュアル化」は標準化した業務の再現性と効率性を高めるために、4つの壁を乗り越える施策を検討する。壁は「作成」「配布」「改定」「運用」だ。マニュアルを作り、作ったマニュアルを配布し、現場の反応を見て、改定する。一定の完成度に達すれば、安全に、運用しなければならない。運用も奥が深くて、全部のマニュアルを全員に見てくれというわけにはいかない。このマニュアルはマネージャーには見せたいけれども、部下には見せたくないという場合もある。スタディストが提供している〈Teachme Biz〉というツールは、この4つの壁、4重苦を解決するために開発された。「マニュアル化」に取り組む際に、多くの会社では定型的なマニュアル否定論が出てくると、庄司氏は注意する。

庄司 昔はマニュアルなんてなかったという意見が必ず出る。マニュアルに頼ると考えなくなる、仕事への取り組みが甘くなるという意見も一定数、特に管理職方面から出る。最後はマニュアルなんかなくてもいいという意見が出て、隠れ蓑的に、世の中、OJTだという話に落ち着いてしまう。こういう議論が出てくるときに、私が最近、よく出す例がカーナビだ。昔はカーナビなんかなかったんだから、今もなくていいのか。そうではないはずだ。今はもうカーナビを使うのは当たり前だから、他社はカーナビを普通に使って迷わずに行く。それなのに、自社はいつも迷いながら先方の会社に行っていていいのか。驚くほど道に迷う、再現性の低い仕事をする会社と、驚くほどまっすぐ行く会社だと、信頼性、生産性がまったく違う。カーナビはあったほうがいいのだ。

「マニュアル化」のためには、「目標全体計画」「手段」「内容」「体制」「品質管理」「普及施策」「インフラ」に分類された20項目もの「推進チェックリスト」によって、必要な施策や責任部門などをきっちり決めていく必要がある。「マニュアル化」し、ツールを使いこなしている会社は、この20項目を考えぬいた会社だ。4番目の「ツール化」もITが得意とする7つの機能「検知」「記録」「集計」「判定」「指示」「実行」「通信」といった項目それぞれに、どんなツールを使ってシステム化するかをしっかり考えることが重要だ。

庄司 ITをめぐるトレンドは日に日に変わり、いろんなニュース、製品、機能が出てきている。ただ私は、ITのツールをきちんと使いこなすときのポイントは1つだけだと思っている。万能のツールをさがさないことだ。ホームセンターに行って、安価な工具セット一式を買っても、結局、1つも使わずに死蔵してしまうことが多い。自分に合った、自分が気に入ったドライバーやノコを、1本1本さがすほうが良い。自分に合ったツールは何かをしっかり考えて欲しい。

■「マニュアル化」「ツール化」を見直して大きなメリットが

「マニュアル化」と「ツール化」によって、仕事のあり方を大きく変えた事例として、庄司氏が紹介したのが、ジェイアール東日本フードビジネスの事例だ。同社はJR東日本グループの一員として、主にエキナカのファーストフード店やレストランを展開している。中でも、89店舗を展開する同社の主力業態の1つが「ベックスコーヒーショップ」だ。

庄司 「ベックスコーヒーショップ」にはアルバイトスタッフが約2000人いる。そして、1年間に、学生を中心とした約900人が退職し、交替していく。こうした入れ替わりの激しい職場で、従来は3階層の情報伝達が実施されていた。例えばメニューを変えるときには、本社・本部→スーパーバイザー(エリア統括)→店長→スタッフという形で、3段階のいわば伝言ゲームが「研修」の形で行われていた。〈Teachme Biz〉を導入することで、この情報伝達に構造変化が起き、情報は本社・本部から3者(スーパーバイザー、店長、スタッフ)に直接、1階層で伝えられるようになった。本社・本部が考えている正しいやり方はこうだと直接的に伝えることで、全員が同じタイミングで、同じ情報を見ることになるので、情報伝達のロスがなくなった。

〈Teachme Biz〉の導入効果としてあげられるのは第一に、店長の出張時間が減ったことだ。従来は新メニュー展開時に各地の店長が東京に出張し、研修を受けていた。この店長研修が軽減されて、出張時間が年間で約1000時間削減され、出張のための交通費も節減された。さらに、利用客からのメニューの見栄えに関するクレームが従来に比較して約80%削減された(ニュース参照)。本社・本部から3者への情報伝達は、対面の「研修」から電子的な伝達になったが、現場では「いつでもマニュアルを確認できるのが良い」「動画なので分かりやすい」「アルバイトが能動的にマニュアルを見て調理するようになった」といった声がでており、「研修」よりむしろ効果的なマニュアル活用が実現している。

ジェイアール東日本フードビジネスでは、従来から業務の標準化、マニュアル化に取り組み、調理マニュアルや機器メンテナンスのマニュアルを整備し、紙に印刷して管理していた。そのため「見える化」「標準化」はできていたものの、上記で、庄司氏が解説した「マニュアル化」「ツール化」の部分でムダが多かった。その部分を見直してツールを導入、運用したことで、大きなメリットが実現できたと言える。庄司氏は最後に、生産性向上プロジェクト成功のコツとして「スモールスタート」を挙げた。スモールスタートの要点は「目的や目標値をできるだけ絞り込む(あれこれ狙わない)」「対象範囲を絞り込む(全部署に広げない)」「実践を重んじる(計画に時間をかけない)」「軌道修正はしなやかに(計画に固執しすぎない)」の4つだという。