外食の競争環境と3社のテクノロジー戦略

「外食総研セミナー」 2017年9月6日 13時~14時
<セミナー概要・講師等>
①「2016年度外食市場調査」から見る外食の競争環境――ホットペッパーグルメ外食総研 上席研究員 稲垣昌宏氏
②外食産業の生産性向上~テクノロジーを活用していかに付加価値創出につなげるか~――ホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリスト 竹田クニ氏/すかいらーくマーケティング本部デジタルマーケティンググループディレクター 小林克明氏/イタリアンイノベーションクッチーナ 代表取締役社長 四家公明氏/ダイニングファクトリー九州男児事業部長 砂岡祐也氏


セミナーの前段ではホットペッパーグルメ外食総研の「2016年度外食&中食動向」の最新データと「外食市場調査」8月の追加調査の結果から、外食産業の市場環境、競争環境を上席研究員の稲垣昌宏氏が解説。その後、竹田クニ氏の司会で、「外食IT」などのテクノロジーを駆使して付加価値向上を実現している3つの外食企業が紹介された。ここでは後半を中心に抄録する。

■生産性向上は効率化から「人の力」重視の次代へ

外食をめぐる競争環境は複雑化している。外食の業態間の競争に加えて、イートインスペースを設けた中食との競争も激化。さらに、働き方改革の影響で帰宅時間が早まったことを1つの要因として、自炊(内食)との競争も激化しつつある。ホットペッパーグルメ外食総研の稲垣昌宏上席研究員は今後の外食の競争環境を「消費者ニーズによる『コスパ』と『付加価値』の2軸での戦い」だと結論づけた。

竹田クニ氏

この結論を受けて、同総研エヴァンジェリストの竹田クニ氏が登壇。外食の生産性は分母=(効率化、合理化)と分子=(付加価値向上、新市場開拓)の計算式で表されるが、この分母、分子こそ稲垣氏の言う「コスパ」と「付加価値」に当たると指摘した。分母を最小化し、分子を最大化すれば生産性は上がるという理屈だ。

ところが、長引く景気低迷のもと、外食産業では分母に当たる効率化・合理化(ICT活用/機械化・ロボット化/共同化・集中化/人材マネジメント)を非常に重視し、一生懸命やってきた結果、非常にクオリティの高いものが安価に、手軽に食べられるようになったものの、分子すなわち「メニュー」「食材の質」「ストーリー」「空間の魅力」「おもてなし」などの部分が削られ、やせ細ってしまったのではないか。竹田氏は、そうした問題提起を行った。

「生産性イコール効率化といった誤解が外食の業界にも浸透しているようだ。これから求められる生産性向上の取り組みでは、分子にあたるマーケティング力、クリエイティブ、接客力すなわち人の力を高めていくことが重要だと思う。テクノロジー、特にICTによって効率を劇的に高める一方、価値を創る、磨く、あるいは価値を量産するという方向に、人が多くのエネルギーを注げるようにすることが必要なのではないか」(竹田氏)

こうした考え方から、竹田氏が選んだ最新の模範的な事例(外食企業)がすかいらーく、イタリアンイノベーションクッチーナ、ダイニングファクトリーの3社だ。

■消費者のニーズと外食のバリューをデータから解析

すかいらーくはファミリーレストランの草分け的な存在として独自の文化を発信してきた企業だが、近年は出店戦略、顧客データ分析などのマーケティングアプローチによって業績のV字回復を果たし、「21世紀的な外食企業の在り方を示している」(竹田氏)と評価された。ゲストとして登壇したのは同社マーケティング本部デジタルマーケティンググループの小林克明ディレクタ-だ。小林氏の発言要旨は以下の通り。

小林克明氏

外食産業の市場規模は縮小傾向にある。なぜ縮小しているかというと、可処分時間の使い方が多様化しているという観点も重要だ。消費者には昔以上にいろいろな選択肢があるので、外食に費やす時間の比率は相対的に小さくなってきている。このように大きく変化している消費者の嗜好をどう理解し、どんな商品やサービスを打ち出していくかを判断するために、データを使うべきだと考えている。

例えば、クーポンを出したとする。そのクーポンの集客サポート効果を判断する際には、そのクーポンを使った人は、普段はどういう来店頻度なのか、何を食べていて、単価はどれくらいかというデータと突き合わせて、結果的に、どういうタイプのお客様に、どういうクーポンが効果的だったかを判断する。その結果から、次のクーポンを企画し、実行して再度、データを分析していく。メニューも同じで、フェアを企画する場合、比較的年配の女性が好みそうなメニューとか、男性が好みそうなメニューとかを意図的に仕掛けていく。その結果、どうなったのかをしっかり確認し、次はどうすればいいかを考える。そういう施策と分析、改善のサイクルが大事だ。それが、確実に利益を生み続けるプロモーションにつながる。

外食のバリューというのは、単においしいものを食べた満足だけでははかれない。いかに楽しい時間を過ごしたかに満足を感じる人が多いが、その「楽しい時間」へのニーズは人によって違い、多様化している。どういう商品を、どういうストーリーで、どういう形で提供すれば、どういうタイプの人が満足していただけるのか。今後も(データを数値化して分析する)マーケティングオートメーションといった手法を使いながら、課題を追求していきたい。

こうした発言に対して、竹田氏は、こう結論づけた。

「詳細な顧客データをストックして、ペルソナに分けて、そこにプロモーションして、集客して、結果のレビューまでやるのは、実は非常にたいへんなこと。そこをやりきっておられるのは素晴らしい。また、テクノロジーを使ってお客様の満足度にまで迫ろうとしているのも大事なポイント。中食のレベルが非常に上がっている今、外食ならではの価値を追求するのは、業界全体に突きつけられた課題だ」

■外注先のテクノロジーを積極活用しスタッフの労働時間も守る

イタリアンイノベーションクッチーナは、カジュアルイタリアン「トスカーナ」、大衆イタリアン居酒屋「東京ミート酒場」などを17店舗展開する新進気鋭の外食企業。社長の四家公明氏は、もともと料理人で、メニュー開発はすべて自分で手がける。大ヒットメニュー〈日本一おいしいミートソース〉はミートソースの上に麺がのるユニークなもので、麺のおいしさを十分に味わった後で、ミートソースに取りかかり、味の変化を楽しむというコンセプトを具現化したもの。メニューはすべて無化調、無添加で、「健康に良い、体にいい、イコール人が幸せになるという考え方を非常に強く掲げている。これを実現するために、調理にテクノロジーをうまく使っているのが示唆的」(竹田氏)だ。登壇した四家公明社長の発言要旨は以下の通り。

四家公明氏

〈日本一おいしいミートソース〉というのが当社のキラーコンテンツだ。しっかりと小麦の香りがする麺を先に麺だけで食べてもらい、後でミートソースで味が変化するのを楽しんでもらう。その本質をお客様に伝えたいのが第一で、次はユーモア。ミートソースなのに、麺しか見えないので、初めての人はびっくりする。食べて見ると、小麦の香りがしておいしいし、ミートソースも粗挽きの肉がごろごろしていて、おいしい。ネーミングもあって、記憶に残る。この看板メニューの質をどんどん上げていって、その注文がたくさん入れば生産性がすごく上がる。そのメニューを、どの店でも安定して出せるようにした。そのために、セントラルキッチンを積極的に使って、10時間かかっていたミートソースの仕込みを90分に短縮した。天然調味料のアリアケジャパンさんに手伝ってもらって、月間2トンのデミグラスソースを作っていただき、レトルト(加圧殺菌)し、冷凍して管理している。

その結果、従業員たちの労働時間をしっかり守れる体制ができた。従来は一つの店を4~5人で回していたとすると、同じ体制で日商が10万円も上がる。労働時間が減っても、売上が大きく上がるので、月給は4~5万円上げられるようになった。小ロットの材料は、千葉県の工場で作っている。工場長はレストラン経験があるので、私とコミュニケーションを取りながら、メニューを作りこんでいくと、お店で作るより工場で作って運んできたほうが、味のレベルが上がる。

いま取り組んでいるのが、社食での食事提供。社食ではスピードが要求されるので、冷凍技術をしっかり使って、〈日本一おいしいミートソース〉を30秒で出せるようにした。乾麺よりも生麺のほうがもともと茹で時間が短くて済むので、生麺を瞬間冷凍することで、30秒で茹であがる。それでも、質は変わらない。私が目隠しテストをしても、お店で茹でたものか、冷凍か分からないくらいのレベルに仕上がった。最近は、アサヒビールさんに相談して、ビール酵母を使った調味料も研究している。