辻本 日本酒の栓には試行錯誤しました。最初は、ワインに栓して空気を抜く「バキュバン」という栓を使ったり、コルク抜きと一緒に使うフッ素樹脂の栓を使ったりして、どれが最適か試しました。その結果、やっぱり日本酒の王冠が一番、品質を保つのにはいいということになりました。ところが、王冠は、手からあやまって落とす人が多いことにスタッフが気がつきました。そこで、王冠はどれも同じサイズですから、新しい王冠に付け替えればいいと思いつき、新しい王冠をテーブルに置いておくサービスを始めました。そんな風に、お店では、細かい点まで検証して、改善していくという作業を繰り返しています。王冠は一例ですが、目指すのはあくまでカジュアルな店。日本酒の敷居を下げて、さらっと飲みに来られる店にしたい。今まで、日本酒を中心に出す飲食店は「ザ・和食」的な堅いイメージが強かったですね。「KURAND SAKE MARKET」はもう少し、ふわっとした雰囲気の店にしたいのです。そういうふわっと、カジュアルな雰囲気を気に入って、何度も来ていただいているお客様もいらっしゃいます。

蔵元の顔が見えるので親しみが湧く

こうして作り上げてきた「飲み比べ業態」のオペレーション上の最大の強みは、キッチンレスで、ビールを含めてセルフ飲み放題のシステムのため、店舗スタッフの業務負担が小さいことだ。店舗スタッフの主な仕事は利用客が入店する際のレジのほかは、利用客の見守りとアドバイスがほとんどで、稀に缶詰の販売業務が入る程度。「KURAND SAKE MARKET」の6店舗はすべて30坪弱、50席前後の規模の店だが、それぞれを最大3人の店舗スタッフで回している。利用客が少ない日は、スタッフ1人で回すことも少なくないという。こうした軽いオペレーションを可能にしているのは、キッチンレスとセルフ飲み放題のシステムに加えて、利用客の60~70%がWeb経由の予約客という現状があるだからだ。

辻本 Webでの集客に成功していることが、ほかの飲食店にない大きな強みだと思っています。当初はグルメサイトの登録もしませんでした。Webのプロモーションが成功したので、総来客数の60~70%がWeb上で検索し、予約をいれていただいたお客様です。だからこそ、悪立地の空中階でも、安定した集客が実現し、売上も安定しました。このあたりはヒマな日、忙しい日というのは、Web予約の入り方で事前にかなりの程度、予測できますから、スタッフの配置やローテーションも、効率的に計画できます。

やはり、「お酒にもっと新しい価値を」というコンセプトに基づく発信力と、しっかりしたWebプロモーションが「KURAND SAKE MARKET」を支える最大の成功要因なのだ。リカー・イノベーションによる「外食IT」の活用に関しては、彼ら自身がWeb上で細かいノウハウを公開している――「飲食店オーナー必見。食べログやぐるなびに依存しない、無料のインターネット集客方法まとめ」。SNSの性格に合わせて、使い方を変えるノウハウなども興味深い。さらに一歩進んで、企業とのコラボ手法まで公開している――「数店舗の飲食店が、お金をかけず様々な企業やブランドとコラボレーションする方法」。ご参考までに。
リカー・イノベーションでは今後、現状の「飲み比べ業態」の店舗を倍の規模(出店数)にする目標を掲げ、さまざまな新業態の開発も視野に置く。中長期的には、日本酒を海外にEC販売するといったグローバルな事業展開も考えているそうだ。

イベントで来店した惣誉酒造(栃木県)の販売本部長、井口晃氏(左)。蔵元との関係も深まっている