「SHUGAR MARKET」「HAVESPI」という新業態の立ち上げの際にも〈Makuake〉にプロジェクトを掲載するなど、これまでに10回ほど、クラウドファンディングを実施している。店舗の開業以外で、よく使っているのは、蔵元と共同開発している日本酒のPB(プライベートブランド)をプロモーションしたいときだ。醸造経験もあるリカー・イノベーションのバイヤーが蔵元を回り、今季の造りの状態や今後の酒造りの希望などを日常的にヒアリングする。その上で、辻本氏ら企画の人間が適宜、蔵元との話し合いに加わり、プロモーションする側のアイデアも突き合わせて、新しい日本酒ブランドを開発していく。

辻本 例えば、最近プロモーションした日本酒に「鈴木」があります。これは「佐藤はあっても、鈴木というお酒は聞かないね」という発想から、全国で2番目に多い名字である「鈴木」をブランド名にし、「若き醸造家の新たな挑戦!鈴木さんの鈴木さんによる鈴木さんのための日本酒『鈴木』」というプロジェクトを〈Makuake〉に掲載しました。埼玉県久喜市にある寒梅酒造で、33歳の若さで杜氏をつとめる醸造家、鈴木広杜さんは全国新酒鑑評会で3年連続金賞受賞という実績を持つ次代のホープ。その鈴木さんにスポットを当て、鈴木さんが地元久喜産の「彩のかがやき」という米を使って、初めて挑戦する「生もと造り」の日本酒「鈴木」への支援をお願いしました。その結果、支援者へのリターンを含めて、蔵元から出荷した「鈴木」1000本が、わずか4日間で完売しました。

こうしたPBの日本酒はだいたい月に1~2銘柄前後のペースで、「KURAND SAKE MARKET」の店頭に登場する。通年商品として店頭に置くために開発したものの、人気が高く、昨年は3カ月で売り切れたという商品が「CRAFT SPARKLING SAKE」だ。「CRAFT SPARKLING SAKE」は埼玉県深谷市の滝澤酒造とリカー・イノベーションが共同開発したもので、シャンパン同様の瓶内二次発酵よって、炭酸ガスを日本酒に溶け込ませた発泡日本酒。人気に応えて今年も登場し、定番商品となりそうな勢いだ。

「梧桐 大吟醸 生 超辛+10」は16年で一番よく飲まれた日本酒で、山形県の秀鳳酒造場と共同開発した超辛口の大吟醸酒。大吟醸酒でありながら、超辛口という大胆な商品デザインにインパクトがあり、カラフルな鳳凰のラベルも親しみやすい。酸味が特徴の蔵元として知られるのが徳島県の三芳菊酒造だ。リカー・イノベーションと共同開発の「三芳菊ワールド」は、蔵元が自身の日本酒をイメージして、作詞作曲したオリジナルのサウンドトラックをYouTubeで聞ける。酸味が強く、フルーティな三芳菊ならではの味わいを、音楽とともに堪能できる。

人気の高いCRAFT SPARKLING SAKE
人気の高いCRAFT SPARKLING SAKE

「ラベルがカワイイ」と評判で、SNS上でブレイクしつつあるのが「酒を売る犬 酒を造る猫」だ。この新銘柄は、新潟県・宝山酒造の5代目である渡邉桂太氏が別の蔵元での修行から帰って、初めて造った日本酒。第1弾のラベルには、渡邉氏と同社営業の若松秀徳氏が、大学の同級生として出会い、将来の酒造りについて酒場で誓い合う様子が描かれている。今年発売の第2弾は渡邉氏が実家とは別の蔵元で修行し、若松氏が日本酒専門店で修行する様子を描く。物語仕立てで、2人の出会いから現在までを描き、その物語を犬と猫というキャラクターのイラストでラベル化するコンセプトが、日本酒好き、さらに犬猫好きの女性にウケている。

こうした盛り沢山のPB商品に加えて、最近始めたのが製品化前の日本酒をパイロット的に店頭に置いて、アンケートなどで反応を見る「KURAND Lab.(クランドラボ)」という試みである。

辻本 「KURAND SAKE MARKET」の冷蔵庫の一部に3本だけ、ラベルも何もない、蔵元名しか書いていないお酒が置いてあります。そのお酒を試していただいたお客様に、店舗スタッフがヒアリングしたり、アンケートをお願いしたりして、その結果を蔵元にフィードバックし、品質の改良やコンセプト作りに役立ててもらいます。こうした試みから生まれたのが今年6月から店頭に出している「八男(ヤツオ)」という日本酒ブランド。風の盆で有名な富山県八尾にある玉旭酒造と共同開発したもので、餃子のような味の濃い食べ物にもよく合う濃厚な味わいの食中酒です。「熱い男が醸した濃い日本酒!」というのがキャッチフレーズで、杜氏さん、蔵元さん、奥様の3人だけで、越中八尾の想いを込めて酒造りをしている蔵元の心意気を強くアピールしたブランドです。

商品化前の日本酒
商品化前の日本酒

店舗スタッフ向けの「福利厚生」も実にユニークだ。「KURAND SAKE MARKET」で働く店舗スタッフは全員、無料でお店を利用できる。営業時間内ならいつでも、好きなときにふらっとお店を訪れ、好きなように日本酒飲み放題が楽しめるのだ。もちろん、自分で働く店以外の店舗も同じように利用できる。制度を利用して、日頃からお店の日本酒に親しむスタッフが多いという。この「福利厚生」のおかげで、自然と日本酒に関心の高いスタッフが集まるし、無料の試飲を通じて、日頃から商品知識を蓄えることができる。さらに、利用客の立場から日常的にお店を見ることで、利用客の要望の是非も判断でき、その結果として、サービス改善のためのアイデアも各店から集まってくる。

「KURAND SAKE MARKET」は当初は立ち飲み専門の店だったが、椅子に坐ってゆっくり飲みたいという要望が数多く寄せられていたところから、店の混雑が落ち着いてきた16年9月に、全店にスツール椅子を導入した。また、同じタイミングで、それまで別料金(1杯200円)だったビールを、日本酒飲み放題料金に含めて、日本酒だけではなく、ビールも合わせて飲み放題にした。肴向けの缶詰も30種類程度に増え、1杯500円の「ちょい飲みプラン」も導入した。面白いのは、一升瓶向けの予備の王冠が日本酒を注ぐテーブル上にたくさん置いてあることだ。王冠を抜いて、お酒を注ぐうちに、王冠を床に落としてしまうことがある。その際には、落とした王冠を洗って使うのではなく、別に用意してある新しい王冠を使ってくださいというサービスだ。