トークセッションの登壇者4人。左から秦野芳樹氏、大島力也氏、塩治裕之氏、石井真介氏。右は司会者
トークセッションの登壇者。左から秦野芳樹氏、大島力也氏、塩治裕之氏、石井真介氏。右は司会者

<2018年5月9日> ネット予約顧客管理システム〈TableSolution〉を提供するVESPER(ベスパー)は5月9日、「飲食業界における無断キャンセルの現状と解決法」というテーマのトークセッションを東京・銀座で実施した。同社の谷口優社長はイベントの冒頭で、「マナーの悪い人のためにマナーの良い人が迷惑をこうむるのはよくない。無断キャンセルという課題を、システムでいかに解決するかに今後も積極的に取り組みたい」と宣言した。これに続いて、同社スタッフによって、飲食店の「無断キャンセル」に関するアンケート調査結果が発表された。

この調査によると、無断キャンセルが起こりやすい予約手段は「電話予約」(59.4%)がトップとなり、次いで「グルメサイトのネット予約」「自社ネット予約」があがり、予約キャンセル後に個人を特定することが難しい予約手段が上位に並んだ。また、無断キャンセルの主な理由としては「複数店舗の“とりあえず”同時予約」などによる「予約取り消し忘れ」が多数を占める結果となった。無断キャンセル経験者は20代が最も多く、約半数を20代が占めた。さらに、消費者がキャンセルしやすいと感じる飲食店は「居酒屋・チェーン店」(51.9%)、「焼肉」(26%)、「ビアガーデン」(25.5%)が上位となった。この調査結果からもうかがえるのは、宿泊施設・航空券・映画館などの予約に関してはネット予約が広く普及している上に、ネット予約時にクレジットカード情報を事前に入力し、「事前決済」や「カード利用枠(与信枠)の仮押さえ」を行う仕組みが整っているのに対して、飲食店の予約に関しては、そうした仕組みの普及・浸透が遅れていること。日本の飲食店利用客の意識の中には、予約時にクレジットカード情報を入力することに対する抵抗感が存在している、という問題も提起された。

石井真介氏

トークセッションでは、業態の異なる人気飲食店オーナーなど4人が登壇し、無断キャンセルの経験や解決策について意見を述べた。フレンチの人気店「シンシア」オーナーシェフの石井真介氏は「無断キャンセルは金銭的にも痛手だが、それ以上に、席が空いていると店内がおかしな空気感になるのが怖い」と無断キャンセルの目に見えないデメリットを指摘。席数が少なく、予約が取りにくい人気店ほど、無断キャンセルで席が空いていると違和感があり、嫌な雰囲気になる可能性があるという。石井氏の店では、以前は、スタッフが頻繁に予約客に予約確認の電話を入れていたため、その手間とストレスはかなり大きかった。今年初めに、ネット予約時のカード決済システムを導入してから無断キャンセルは減り、「明らかに効果があった」という。

秦野芳樹氏

江戸前鮓「鮓職人 秦野よしき」の大将、秦野芳樹氏も「週に1件程度は無断キャンセルがある」と打ち明けた。先月は貸し切り予約が無断キャンセルになったという。お店は8席×2回転を標準で営業しているので、1回転分のキャンセルがあると、赤字になる。1週間前から準備する食材のロスも残念だが、前出の石井氏と同じく、「店の空気感がおかしくなる」のが一番嫌だという。「鮓職人 秦野よしき」では今年3月からネット予約時のカード決済システムを導入し、無断キャンセル対策に取り組む。システム以外で一貫して力を入れているのは、電話による予約確認作業。ネット予約の利用客にも、電話して、直接声を聞いて確認するのが抑止力になるという。また、昼間に電話しても、予約客は仕事中のことが多く、店が閉店した後の夜に電話するよう心がけているそうだ。

塩治裕之氏

フレンチからブッフェまで12のレストランを運営する「ANAインターコンチネンタルホテル東京」料飲サービスマネージャーの塩治裕之氏は「キャンセルに関するルールは決めているが、キャンセル料はいただかないことが実は多い」と言う。キャンセル後に、メール、電話などでキャンセル料を請求する場合、スタッフのオペレーションコストがキャンセル料を上回る可能性があるため、キャンセル料の徴収よりも、キャンセルで空いた席に集客するほうに従来は力を入れてきた。ただ、「外国人のお客様などはメールのやりとりだけではコントロールしにくいし、個室の予約キャンセルのような場合は(用意していた)食材とスタッフのコストが大きな負担になる」ため、「今後はレストランのタイプを考慮しながら、少しずつネット予約時のカード決済システムを導入していきたい」という。

大島力也氏

オイスターバーや食材にこだわった居酒屋などを運営するジャックポットプランニング営業本部長の大島力也氏は「忘年会、歓送迎会の時期には特に無断キャンセルが発生しやすい」と言う。昨年末には、70名の貸し切り予約が無断キャンセルされ、大きな被害をこうむった。この場合も直前まで電話で予約確認作業をしていたが、結果的に、当日になって連絡がとれなくなったという。「人と人との信頼の問題なので、防ぎようがないのが実態。対策は模索中だ」と話す。大人数の予約でありながら、人数が「40~60名」というように大雑把な場合は特にリスクが高いため、来店の予約の場合は必ず名刺をもらう、1週間前から確認の電話を頻繁に入れるなど気をつかっている。予約時のカード決済システムを導入するかどうかについても、前向きに検討中だ。

予約時のカード決済システムの導入が、無断キャンセルを防ぐための抑止力になるのは確かだが、場合によっては「4人のテーブル席の予約が入りにくくなった」(石井氏)といった集客面のデメリットも考えられるので、杓子定規にはいかない。ただ、登壇者たちは「(ネット予約時のカード決済システムは)これから数年で飲食業界にも普及するのではないか」(大島氏)と将来を見通し、「みんながシステム導入を始めればそれだけ(飲食店予約でクレジットカード情報を入力することが)一般的になっていく」(石井氏)、「お店での食事も、予約1組1組のために入念な準備をしている点などで、1日2回の劇場公演と同じような価値を持つと思う。だからこそ、予約時にカード情報を入力することが当たり前という意識が高まって欲しい」(秦野氏)などと話し、「発信力のある店が率先してオンラインカード決済システムの導入に取り組むべきでは」というのが当面の一致した処方箋だった。